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「…………あれ、このまま行ったらどうなるんだろう。」
僕の大切な姉は、この先きっと怖いものをこうやって怖くないようにして生きていくのだろう。別に僕が姉のためにその巻き添えを食らうことは、姉に冷やし中華を食べさせてもらえることはこのクソつまらない怠惰な僕が姉の為に存在している気になれてむしろ嬉しく感じる。そして姉のせいで僕がこうなって姉をあんな姿にしたのは本当に申し訳なく思う。
でも姉に色々奪われてあんなに泣いたり叫んでいる彼らを見ると、相対的にこんなに恵んでもらっている今がなくなる事が怖くなった。
姉がいなくなったら僕はどうすれば良いのだろう。
僕自身は姿はどうあれど、ちょっとの休みと誰かの為になれるだけで生きる気力がわく。でもその人の誰かの為、つまりは『僕がいると確認できる』人がいないと、シャイな僕は簡単に自分が消えていく感覚に陥る。
「…………あ、だから知らない神様がいるのか。」
目の前の神様は抜歯に夢中で周りが見えてない。
後ろから恨めしそうに睨みつけた映子が必死に這いずり、今しか使えない歯で姉の喉元を狙っていた。
垂れた舌から涎を滴らせながら興奮気味の姉は、僕の机から取り出したペンチで歯を抜く。それでも僕は姉の事は大切だと思ってるし、明日も冷やし中華を食べさせて欲しいと思う。
でも僕の中での神様は、僕がいると確認できる物はもう知らない宗教の神様でも、
そこらへんの犬でも、
今僕の部屋にいるような人達でも何でも良い事が分かった。
「……私だけじゃなくて、お前の大切にしないといけない響までこんな目に合わせやがってえええ!!」
狼のように吠えた映子が姉の喉元に食らいつく。
どうやら映子も映子を神様だと思えば僕を認識してくれるみたいだ。
そうだ、もし姉さんがこれで死んだら僕は映子の為に頑張ろう。
どちらもダメなら冷やし中華に神様になってもらおう。
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