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僕と姉の関係というのは姉の冷やし中華作りの成長記録を追えば大体分かる。
僕がまだ幼稚園にやっと通い始めた頃だ。
二つ上の年の姉は僕らの母が作った具をグチャっと滅茶苦茶に載せて、我が物顔でそれを、
「私がひー君の為に作った冷やし中華!」
と言って僕に食べさせてくれた。
その時はまだ箸も上手く扱えなかったのかフォークで巻いて姉は口に突っ込んできたが、その時の捕まえるように握ってくれた手の温もりと、僕が食べるとぱあっと明るくなる表情が今でも焼きついて離れない。
確かその頃、幼稚園にシャイな僕を置いていく母が嫌いであった。
その上「友達はできたか?」と聞いてくる母しかいないために、子供ながら理解できないやるせなさを感じていたのだろう。
僕はそれから友達も作らず、
母より姉に甘えるようになったのだ。
そうして2人ですくすくと育つと、
段々と器用になった姉は僕の好きな猫型にハムを切るようになって、
自分で取ったキュウリのを洗うようになって、
僕好みの固さに麺を茹でるようになって、
タレが栄養価が高くなるようにアレンジを加えるようにまでなって行く頃には、
僕の大切なのは変わらないけど見た目が随分と違う姉がそこにいた。
いつの間にか隣に立てば僕の方が10㎝も高くなっていた。
僕が大人だとされてる年になって、
それでも姉は僕に冷やし中華を食べさせてくれて、
恥ずかしいけど姉に冷やし中華を食べさせて貰うのは何処か嬉しかった。
シャイな性格のせいか人とよっぽどのことがない限り人と話せない僕に、そうして話しかけてくれる姉というのは、恵んでくれる姉というのは僕を存在させてくれてる神様に他ならない。
だから僕は姉の為にこうなって、
姉のせいでこうなったのだが別に悪いとは思っていなかった。
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