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K出版社の駐車場に間隔をあけて入る4台の内、1台は意識的に少し離れて止まった。
出て来ない様子に松本の車に近寄る長谷川編集長。
『何かトラブったのか?佳那子くん?松…拓也くん?』
コンコン…と控えめ合図してみるが反応はない。
『佳那子くん!?ま、拓也くん!?吉井さん?』
『編集長、あたしが声をかけてみるわ』
『藤永?』
お団子ヘア・ラフなワンピースに着替えた藤永がニヤリと笑う。
2人の気持ちを知る藤永だからこその粋な計らいかと思われた。
『早くしないと開けるわよ、松っ本さーん』
コンコン…と悪びれもなく合図する。
………
『私が佳那子さんの膝で寝ちゃって』
『松本さんじゃなく?』
『か…佳那子さんで…す』美和は赤くなりスカートの裾を握りしめた。
『だから髪がクシャクシャなんだ?膝で寝てそんなに髪が乱れるかしら?』
美和はさらに赤くなり藤永やみんなの顔が見られなかった。
『ふぅ~ん…ウソ…ってにおいがするけど?』
『美和ちゃんが困ってるのに信じてあげないの?』
『色男のお姉さん(笑)』
K出版社で度々顔を合わせる為に顔見知りな2人。
年上だから遠慮がちな言葉とは無縁の藤永。
『相っ変わらず怖いもの知らずね』
佳那子は呆れながら藤永に苦笑する。
『松本さんは電話…電話中です』
佳那子・藤永のお笑い的なトークに気がいっていたみんなは美和の言葉に注意を向けた。
『電話中で…す』
『ふぅん、電話中じゃ仕方ないな』
『電話終わりました』
佳那子も美和も振り返り拓也を見た。
松本さん…
こんな松本さんはじめて…ドキドキする…
ドキドキするの…
藤永はスカートの裾から手を離し拓也に見とれている美和から…佳那子の膝枕も電話もウソだと見破った!
『どうしちゃったんだい?(笑)その服』
長谷川編集長やみんな拓也を凝視した。
『ストライプだけじゃ寂しいでしょ?』
『目立っちゃうぜ』
『いわゆるアクセント的な、テーマはラブね』
あまりにも堂々としたセリフに、周りはそれならそれで良いと思えてしまうのが不思議。
佳那子は“良く言うわ”と呆れ顔で拓也を見ていた。美和は拓也のシャツを見て顔があげられない。
藤永は事の真相を知りたいが為に悔しそうだった。
『予備のシャツくらいあるだろう?着替えないのかい?』
『シャツはあるけどこれが良いのよ』
美和はまたうつ向いて泣きそうになった。
松本さん……!
ごめんね!
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