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蒼い満月が夜の闇を照らす深夜。
静かな郊外にある廃工場の一角、その工場の屋根の上で、青年はぽけたんと月を見上げていた。
蒼く長い髪と、紅い瞳。そして整った容姿を持っているにも関わらず、その、アホまる出しのような表情のせいで、5枚ぐらい自分を引きずり落としている。
思考は、無論回っていない。
どれくらいこうしているのだろうか……本人には考える頭が、今はない。
さらに一時間ほどが経過した頃、彼の思考はようやくゆるりと動きだす。
──何でこうなった?──
それは、胸の中での呟き……
──自分の契約主は……清楚で可憐で、ちょっぴり甘えん坊で泣き虫で、ちょっぴりドジでとっても一途な、身長150㎝くらいの……そう……いつぞやルナヴィスと言う町で見掛けたあの美しい紅い少女のような……の、ハズだった──
ろくでもない勝手な理想・妄想である。
──ハズだった……のに……──
ハラハラと、大粒の涙が溢れ出し、こぼれてゆく。 ふるふると全身が震える。
きっ
──と、青年の表情が、怒りのそれに一変する。
背後に燃えるすさまじい炎!(の、幻影)
──それが何故──
再び、否!今度は胸の内で叫ぶ!!
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