序章:「月に吠える」

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 ──それが何故!あんなチビで生意気で目付きも口もすこぶる悪いクソガキとなんぞ契約をぉぉおお!!──  それが現実である。  ──やかましいっ!──  ……?……  さておき。  先程から何事かを胸の内で叫びまくっている彼は、一人妄想してるアブナイ奴かと言うとそうではない。  一言でいうところの、彼は人間ではないのだ。  『昏きもの』  俗に言う吸血鬼。  名を、『ディアスブレイド=ウェルゼ=アーチェス』と言う。  一般に吸血鬼と言えば、その名の通り、人の生血を吸う不死身な化け物とは言われているものの、陽の光・水・十字架・聖水・にんにく等の弱点を意外と多く持つ不安定な存在として知られているが、実際はそうではないらしい。  太陽の下で普通に生活し、風呂には入るし水浴びもする。にんにく料理も食せば、十字架のアクセサリーを身に付ける者もいる。  実質上、そこいら辺は人間となんら変わりない。  ただ、人間とはっきり異なるのは、その強大な『力』と、人には有り得ない『紅い瞳』、そして『血を吸う事』である。
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