序章:「月に吠える」

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 では彼等『昏きもの』は、弱点の無い無敵な存在で、血を求めて人を襲いまくる化け物かと言うと、確かにそういう者達もいるが 、そうでない者達が大半である。  実際の所、『昏きもの』が必要とする血液の摂取量は僅かなものでしかない。  しかしそれは、一回の摂取量であって、それで全てが事足りるワケでは無論ない。  だからと言って、とっかえひっかえ人間を襲い、血液を頂戴するだけでは飢えは解決しなかったりする。  と言うのも、人の血液は個々にその成分が微妙に異なり、その差異によって摂取できる養分が変化するから、である。  よって、無差別に血液の摂取など行えば、偏った形で養分をとる、いわゆる『偏食』になってしまう。  『昏きもの』とて病気にもなれば、早死にもする。それを避けるためにも、彼等は偏食をしないように、効率の良い吸血プランを考案した。  それは──  『人間に服従し、血の契約を結ぶ。そして契約者の血に合わせて自分の身体を“変異”させる』  と言うものである。  これを用いれば、契約した人間の血液に自らの身体をそれに合うよう調整するため、その血を定期的に少量摂取すれば充分事足りる。
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