序章:「月に吠える」

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 そして、その見返りとして、『昏きもの』はその強大な『力』を契約者の人間に使役させるという、中々良くできたシステムである。  契約を結んだ人間と『昏きもの』の間には“契約主”“契約鬼”の主従関係が成立し、大半の吸血鬼達はその契約によって、人間の配下におかれている。  まぁ、主従関係が逆転しているように見えるペアがほとんどではないか?と言うのはまた別の話。  さておき。  が、しかし世の中に“完璧”は存在せず、このシステムにも、やはり欠点はある。  それは、“契約主”の急死である。  事故であったり、殺人であったり様々ではあるが、もしそうなれば、“契約鬼”は『食事』をとる事が出来ず、当然飢餓状態になる。  契約主が天命を全うした場合は、その死期を見越してカスタマイズした自分の体を長い時間をかけて元にもどす、いわゆる『リセット』が可能だが、前者の場合は手の打ちようがない。  飢餓状態に陥った『昏きもの』は、自我を失い、飢えを満たすため見境なく人間を襲い始める。
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