とある乙女的な考察

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 乙女ゲーム。その概要は大体みんな知っていることだろう。  女の子向けの恋愛シミュレーションゲーム。  現在こそ多種多様な物語や設定があるわけだが、一昔前にはそれこそありふれた王道的シンデレラストーリーなどが多かったわけである。  それを基準に考えてみると、ノーマルでもアブノーマルでもそう変わらないような気がするのだ。  勿論主人公を女の子に替えて、攻略対象への暴力行為を辛辣な言葉に置き換えて、制裁をライバルの邪魔だと仮定し、友人を情報通の助言者と入れ替えたらほら、見事な乙女ゲームに早変わり。  主人公が元庶民や現庶民だったら完璧である。  巡り巡って古いものへと帰ってくる、懐古主義な日本人らしい感性であるとも言えるのではないだろうか。 「まぁ、別に私は乙女ゲームも王道も好きではないけど」  乙女ゲームの知識に関しても、女の子たちとの付き合いの中で知ったものである。私がやったわけではない。  それにどちらかと言えば私はギャルゲーの方が好きなのだ。  そう言って憚らない私に、いつもの如く千景は面白そうに笑いながら言う。それに私はきっぱりと断りを入れた。 「みくちゃんってオカマなのに不思議と男前だよね。つまらんです、はい」 「オカマじゃないわ」  生まれつき、顔つきと身体つきが女性的なだけだ。  それに似合うものが男物より女物だっただけだ。  外見に合わせる口調が女だっただけだ。  その環境に父親以外が積極的だっただけだ。 「私は男よ、今も昔も」  乙女だと言われることもあるし私自身も乙女趣味だとは自覚しているが、実際可愛いものが好きなだけ。私の本質は他と何ら変わらない、男である。  ――――男と恋愛なんて、冗談じゃない。    Fin.
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