街道

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多数のやせ細った日本兵が、よろめきながら東に向けて歩を進めている。 小隊、中隊、単位で行軍している部隊の将兵は、ほんの一握りであり、大部分の将兵は、所属部隊がバラバラのまま1人か2~3人、多くても5~6人で肩を抱き合うように、銃を杖代わりにして、タイの方向に向け力無く歩いていた。 突然、部隊単位で行軍していた将校の1人が「退避!!」の声を上げ、腕を大きく振り、直ぐ密林に駆け込む。 その声を聞き、動作を見た部隊の兵士だけでなく、部隊の前後左右を力無く歩いていた全ての将兵が、我先にと密林に逃げ込んだ。 将兵が密林に逃げ込むと同時に、密林に爆音が響き渡り、街道に機銃掃射の土埃が数本巻き上がる。 機銃掃射を行った敵機は、街道の遥か先に獲物を見つけたらしく、機銃掃射をしただけで東の方角に去り、暫くすると爆弾が炸裂する音が数回、東の方角から響いて来た。 敵機が去ったのを、上空を見上げ耳をすまして確認した、部隊の将校や下士官が部隊を整列させ、点呼をとり負傷者がいない事を確かめられ、確認後、直ぐに号令が掛けられ行軍が再開される。 それを見て密林に逃げ込んだ将兵らも、三々五々密林から出て来ると、東の方角を目指して力無く歩き始めた。
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