街道

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街道の両側には、逃げ遅れ機銃掃射により射殺された将兵の遺体や、倒れ込んだまま、立ち上がる気力も体力も無くした将兵らが転がっていた。 最初の内は戦死者の遺体は埋葬されていたが、その内密林の中に横たえられるだけになり、今では皆明日は我が身と見て見ぬ振りで、放置されたままである。 街道の傍の密林の中には、落後して戦友に見捨てられた将兵の遺体が転がり、未だ生きてはいるが、餓死寸前の者達が死者と共に転がっていた。 街道の遥か後方、イラワジ河方面で未だに抵抗している部隊がいるのか、大口径の砲弾が続けざまに着弾する音が微かに響いてくる。 街道を力無く東に向けて歩く将兵達の中に、血で汚れ蛆が湧いた包帯を、鼻の上から頭部に掛けて巻いている下士官らしい男と、その下士官に支えられるように歩いている、包帯代わりに血で汚れ蛆が湧いた脚絆を、太腿に巻いた兵士がいた。 敵機の爆音がまた聞こえてくる、街道上をよろめき歩いていた将兵達は、また先を争うように密林に逃げ込む。 2人の男達も倒れ込むように密林に退避。 機銃掃射と共に、街道の両側の密林に爆弾とロケット弾がばらまかれた。 そこかしこで悲鳴が上がり、助けを求める叫び声が聞こえてくる。
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