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崖からすぐそばの建物の一室に鍋やコップや布や細い管が絡み合う複雑な装置が組み立てられていた。装置のあちこちを少年が真剣な面持ちで点検している。少年は慎重に鍋の蓋に長い管をつないだ。直後に鍋から熱気が流れ込む音が聞こえてくる。少年の目の前で装置のあちこちが息を吹き返すかのように管の中の熱気を順に伝えていく。
少年はつながる管の最後、大きな鍋の中に伸びた細い管を、息を殺して見つめていた。
部屋の外から呼び声が聞こえた。
「ごめん、手が離せない。炎、見てきてくれ」
少年が大声で隣の部屋の若者に声をかけた。
「わかった」
赤い髪の若者、炎は、建物の入口に向かった。
ほどなく、袋を担いだふたりの男たちを引き連れて炎が戻ってきた。炎は男たちに指示を出し、袋を部屋の壁にぶら下げさせた。
「ご苦労さん」
炎は両手に小さなコップを持ってきた。男たちは照れたような表情を浮かべ、両手でおしいただくようにコップを受け取る。コップの中にはきつい匂いのする液体がほんの少しだけ注がれていた。
「ここでは飲むな。あっちの作業が全部終わってからにしろ」
袋を両肩にふたつずつ抱えた赤い堀が入口に立っていた。
赤い堀にそう言われた男たちは恨めしげにコップを見おろし、嫌々といった顔でコップを炎に返した。
「オレは要らない」
赤い堀は炎が渡そうとするコップを断った。
「それならオレがもらおう」
片手が立つと入口が小さく見える。片手は袋を四つ抱えていた。
「かまわん。この飲み物は力が出なくなる」
赤い堀は片手の脇の袋を受け取り、そのまま壁にかけた。
片手は炎からコップを受け取り、中身を喉に流し込んだ。
「力がみなぎる」
片手は空になったコップを炎に返した。
「これは奴の分だ。オレのまだか」
炎は肩をすぼめると、もうひとつのコップを手渡した。
今度はすぐには飲み干さなかった。片手は液体の入ったコップを持ったまま建物から出ていった。
「こんなに飲まれちゃ追いつかないな」
炎が愚痴をこぼした。
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