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『涙にも種類があるんだってさ』
隣でしくしく泣く君に言ったのは、戒めのつもりだったんだけど。
慰められたと思った君は、腫れた目を擦って笑った。
君はなんて愚かなんだろう。
僕が優しくないことなんて、とっくに知っているはずなのに。
君はなんて愚かなんだろう。
正しい涙さえ流せないだなんて。
僕はすくっと立ち上がり、なにも言わずに歩き出す。
数メートル離れたところで、振り返って君を覗き見た。
『寂しそうにしょんぼりしていればいい』
君は瞳を潤ませたまま、ただ月を見ていた。
都会で見る月なんて、ちっとも綺麗なんかじゃないのに。
『お前なんて、大嫌いだ』
君から視線を外して、流れる雲を睨みつける。
早く月を隠して、火照った顔も隠してほしい。
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