第1章

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今日こそ早く寝ようと考えていたのに。 「お願い! 私の代わりにせめてあんたが行ってきて!!」 なーんて言われて友人から押し付けられたライブチケット。 こんなバンド、私しらない。 駅のすぐそばの小さな汚いライブハウスは、場所こそ知ってたけど私には無縁の所だった。 6時半開場の、7時開演、か。 まだ時間があるから、近くのコンビニで時間を潰すそう。 そう思ってコンビニに入った直後に、後ろからガツッと大きな音。 「……あいタァ~~~……」 ヨレヨレの白Tシャツに黒いリュックを背負ったオトコが体を丸めて頭を抑えている。 ぼさぼさ頭に大きな黒縁メガネ。妙にひょろっと大きい人だ。 あー、恥ずかし。 他人ごとながら、そう思いながらまっすぐオニギリの棚まで移動する。 ライブが終わるのが9時頃なら、先に何か食べよう。 あ、梅のおにぎりがラスト一個。 ラッキー、と手を伸ばすと 「あ!!」 と、横から声が。 ……さっきの激突オトコ。 「あ、それ、食べます?」 当たり前じゃ。 ヤツは何かつぶやきながら、別のおにぎりを選ぶ。 そのまま激突オトコの次にレジに並ぶと、今度はリュックの中を「あれ?あれ?」と言いながらガサゴソやりはじめた。 もーね。目の前でそんなのやられればレジのオネェサンも私もため息出ますよ。 「これ、どうぞ」 私が1000円を差し出すと「えっ! 悪いです!」って言ったけど、ただ私が早くしてほしいだけ。 コンビニから出たら、激突オトコは私を待ち構えていた。
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