第1章

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「あの、すいませんでした。お金、後で返せるんですが」 後でってなんだ。 「いえ、イイです」 激突オトコを無視しながら、そのままコンビニ前の手すりに寄りかかっておにぎりを取り出す。 …………おにぎりを凝視されてる。 「……なんのおにぎり買いました?」 ヨダレ出るんじゃないかと思うくらい私のおにぎりを見てたけど、私の質問に激突オトコはコンビニの袋をガサガサと覗いた。 「あ、えっと、じゃこワカメ……」 「……じゃあそれ私にください」 食べたかった梅おにぎりを、泣く泣くヤツの買ったじゃこワカメと交換してあげると、激突オトコは嬉しそうに梅おにぎりを食べた。 「ここでおにぎり開けるって事は、ライブに来たんですか?」 口をモゴモゴしながらヤツは話す。 「……まあ、一応。全然知らない人達だけど」 素っ気なさを最大限出して喋る私に、ハハハ、と笑った。 「初ライブですか~。楽しめると良いですね~」 「あなたもライブに来たの?」 「ええ。楽しみだなぁ~」 はー。確かに熱狂的なオタクファンっぽいものね。 「こういうのは前の方が楽しいんですよ! あ、お金、ライブの後で払います!」 だから後ってなんだ。 当日チケットを買うからギリなのか? 「ホント良いです。つまらなかったら途中で帰るかもしれないし」 「……そっかー……」 「もうそろそろ私行きます」 早くヤツから離れたくて、さっさと歩き出したら、後ろから声がした。 「あ、ありがとー! えーと、うめちゃん!」
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