第1章

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激突オトコはギターを高く掲げてから、唄い始めた。 ……なにこれ。 このバンド、すごい。 安定感たっぷりのドラムに、響く重低音のベース。 すごい指の動きをするギターと、ツインギターのボーカル。 ステージの上の激突オトコの豹変っぷりたら、とんでもない。 マイクを掴む指先 長い前髪から時折見える鋭い眼差し 首すじから鎖骨に流れる汗 さっき見た情けない姿が嘘のようにセクシーに見える。 透き通る声で、僕らは自由、と彼は唄う。 足から振動が伝わる。床が揺れてる。 ライブハウス全体が、彼らの出す音で縦揺れになっていた。 私も気づけば汗でビショビショになりながら腕を振り回して飛び跳ねてた。 ヨレヨレと思っていたTシャツまで、今はおしゃれに見えてしまう。 どうしよう。 すごくカッコいいかも……。 そう思ってたら、黒縁メガネを外した鋭い彼の眼が、私を捕らえた。 格好良く豹変した彼は、歌いながらセクシーにニヤリと笑う。 そんな笑顔、反則。 あっという間に時間は過ぎて、もう後はアンコール。 一度引っ込んだメンバーが、また戻って歓声が上がる。 そこでまた目が合った。 ステージの上で、格好良さを6割増して彼は私に言った。 「な? 前の方が楽しいだろ?」 頷く事も忘れて彼を見る。 もう最後の曲だ。 彼はまた 精一杯 唄をうたう
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