2人が本棚に入れています
本棚に追加
彼女の手元に茶色の小瓶が見えた。それが塩や胡椒の類でない事はすぐに理解できた。
白いラベル。青酸カリの文字。
彼女は瓶の蓋を開き、慣れた手つきで少量の白い粉を鍋へと入れた。
そして再びお玉を握り、鍋の中身を掻き混ぜる。
表情は分からない。ただ低い声色の含み笑いが聞こえていた。
手から滑り落ちた花束が床に花びらを飛散させた。
「どうして」
彼女はゆっくり振り返る。
「困るのよ。元気になられちゃ」
目の前に、いつもと変わらぬ天使の微笑みがあった。
澄んだ瞳の奥に狂気の光が妖しく浮かんでいた。
「あなたの苦しむ顔、見られなくなるじゃない」
最初のコメントを投稿しよう!