第1章

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 彼女の手元に茶色の小瓶が見えた。それが塩や胡椒の類でない事はすぐに理解できた。  白いラベル。青酸カリの文字。  彼女は瓶の蓋を開き、慣れた手つきで少量の白い粉を鍋へと入れた。 そして再びお玉を握り、鍋の中身を掻き混ぜる。 表情は分からない。ただ低い声色の含み笑いが聞こえていた。  手から滑り落ちた花束が床に花びらを飛散させた。  「どうして」  彼女はゆっくり振り返る。  「困るのよ。元気になられちゃ」  目の前に、いつもと変わらぬ天使の微笑みがあった。  澄んだ瞳の奥に狂気の光が妖しく浮かんでいた。  「あなたの苦しむ顔、見られなくなるじゃない」
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