ある日、それは何気ない日常会話から始まった――

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 塩コショウ。  ――まぁ、シンプルイズベストってことで。  あんまり捻ってもあれだし。  中学生だから家から持ち出せるものも限られてるし。  てなわけでそれをかけてしばらく待ち、 「いっただきま~す」  1番手に洋介がかぶりついた。  肉、ピーマン、肉まで一気に口の中に突っ込む。  先が刺さるギリギリの範囲だろう。  ぐちゃぐちゃと一緒くたに租借される音が辺りに響き、要と有江の口から涎が零れた。 「うん、め――――っ!」  一気に口から串を抜き出し、天を仰いで叫んだ。  それが引き金となって要と有江も各々に串を取って一気に口の中に放った。  肉汁が口の中に溢れ、塩コショウのと野菜の味がやや焦げた香ばしさと相まっていかにもなバーベキュー感を醸し出した。 「うまっ!」  要は叫んだ。 「うまいねー」  有江も叫んだ。  8月の初めの山に蝉の音が響いた。
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