ある日、それは何気ない日常会話から始まった――

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 狼を見たくなった。  そういう理由で要一(カナメ ハジメ)中学1年生は夏休み、裏庭に張り込むことに決めた。  もちろん中学生だから部活には出るし、夕飯の時間になれば家にだって帰る。  特に要が所属してるバスケ部は結構厳しいところだったからさぼるわけにはいかなかった。  つまりはその隙間をついて張り込むわけだから、実際は張り込みと意気込めるほど張り込めるわけないのだが、気概は張り込みなのだ。  中学1年生だし。  狼が好きな香辛料って何だろう?  張り込みを決めた時最初に思ったのが、それだった。  それは別に最初から狼といえば肉を食うからあとは誘い出すために匂いにだけ――つまりは香辛料に気を遣ったほうがいいな、なんてところまで考えたわけではなく、単純に狼というストイックなイメージが先行して香辛料という発想に及んだだけで、他意はなかった。  中学1年生だし。  友達と張り込んだ。  同じクラスの岸洋介(キシ ヨウスケ)と徳永有江(トクナガ アリエ)。
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