ある日、それは何気ない日常会話から始まった――

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 休憩所の外れの茂みがある辺りに要が持ってきたかなり小型の、大人が1人がやっと入れるくらいのテントをはり、下にビニールシートを敷く。  1日目はその中に持ってきた物を置く作業だけで6時を回ったので、そこで解散となった。  次の日集まったのは午前10時。  その日は要と洋介が所属するバスケ部が昼の3時から練習となるのでそれまでの集まりとなった。  最初の1時間は真面目に張り込んだが、まず洋介が飽きた。 「あぁ~――――あっ! もうやってらんねーっ!」  伏せていた姿勢からいきなり顔を跳ね上げ、頭を掻き毟る。  摂氏30度に届こうかという猛暑の中1時間も草むらの中でじっとしていたものだからタンクトップも短パンも汗でびっしょりと濡れていた。 「ちょ……ダメだろ、顔上げちゃ」  有江も控えめに顔を上げ、ささやき声で注意する。  その間にも夏のむっ、とする熱気のため溢れる汗で滑る眼鏡を手で直しながら。 「だってよぉ、ぜんっぜん出ねぇじゃん、狼。もいいよ。そろそろ昼だし、バーベキュー食おうぜ」  そう言って洋介は草むらを飛び出して、テントの中に入っていってしまった。
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