ある日、それは何気ない日常会話から始まった――

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 薪を4脚の上の金網のしたにある受け皿のスペースに無造作に積み上げ、その上に新聞紙が乗せられ、その先端に小さな火がちろちろと燃えていたが、風が1陣吹き消えた。 「何やってんだよ。こんな適当に置いたって燃え移るわけないじゃん。ちゃんとこう……」  そう言って要はバーベキューセットの説明書を持ってきた。  そこには組み立て方のほかに薪の火の点け方が図つきで載っていた。  薪を斜めに交互に組み合わせ、ちょうど屋根のように下に三角のスペースを作り、そこに新聞紙を入れて風から守りながら燃やす、というように。  それに倣うように要が組み立てていく。 「こう、こう、こうやってさ……」  狭いスペースで器用に体を折りながら金網の下のスペースに斜めにした薪を1つ1つ崩れないように積み重ね、3分ほどかけて屋根が完成する。 『おぉ~』と喚声が沸く。 「そうやってこのスペースに火をつけた新聞紙を……」  言うが早く有江が手早く新聞紙を丸め、その先端にライターで火を点けていた。  灯る、オレンジのランタン。
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