ある日、それは何気ない日常会話から始まった――

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 それを慎重に要に手渡す。  要はそれを受け取りゆっくりと薪の屋根の下のスペースに潜り込ませた。 「ふー。あとはこの火が薪に燃え移って、それが本火になったら焼けるぜ」 「んじゃその間火を焚き付ける人間がいるねぇ」  そう言った要と有江が同時に後ろで手持ち無沙汰にしてる洋介に目を向ける。 「な……何だよ」  そこから洋介がパタパタとうちわで火を焚きつけ続けた。  大体20分くらい。  その間洋介はうちわを持ってない方の手で口から目の下辺りを庇いながらずっと要と有江の方を睨んでいた。  その目は真っ赤に充血して、ところどころ涙が零れていた。  要と有江は各々のうちわで自分を扇ぎながら草むらで寝っ転がりつつ「頑張れー」と囁いた。  ようやく薪が内側から赤くなったところで串を敷いていった。  置いた瞬間ジュ~ッ、と香ばしい音が弾け、1時間半も待たされた胃袋がここぞとばかりに胃液を分泌しだした。  ここで最初に思いついた、香辛料をかける。
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