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「もしもし、あぁ、加奈か」
最近、クラブで知り合った女からだった。見るとその傍らで身を縮ませながら、牧村が複雑な表情で俯いていた。俺はそれを気に止めるでもなく、加奈と他愛のない話しをして電話を切った。
「加奈、さんって……前とはまた違う女の人からですか?」
「あぁ、けど……所詮お水の女だからな。テイのいい遊び相手ってところだ」
俺は牧村の他にも多数の女と遊んでいる。牧村もそれを知っているが、一度も俺を責めたことはない。
俺はその牧村の優しさという弱さにつけこんで、牧村ともダラダラと関係を保っていた。
「高瀬さんの自由を奪う権利は僕にはありませんから、高瀬さんがそばにいてくれるだけで幸せですし……」
「可愛いこというやつ」
そう言って、俺はもう一度免罪符のように牧村の頬にキスをしてやった。
けれど、こんな関係も長くは続かない。いつかは終わりが来る。そう思っていた矢先、牧村との関係にピリオドを打たなくてはならない日がやってきた。
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