一章 初顔合わせのプラエタリタ

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 それにだ、 「……対価は無かったんじゃないのか? 何で私は見知らぬ筈の女性に変身している?」 「郁美よ。我は対価は求めぬと言ったはずだ。『変化』が訪れることは言っておらんがな。して、そなたは何を失った? 何も失っていなかろう?」  いけしゃあしゃあと言いやがりますねこの魚は! 「私の生まれ育った肉体が失われてますが……?」 「失われてはおらんぞ、郁美よ。そなたの今の姿は魔法を簡易に扱えるようにするために、我が与えた魔力が触媒の役目を果たす為にそなたを変化させたにすぎぬ。自らの元の姿を思い浮べれば元に戻る」 「………………お、元にもどった!」  言われた通りにしたら、あら不思議。  見慣れた中肉中背の中性寄りの男子が姿見に映っていた。 「なあ、魔法を使用する際は又さっきの女性の姿にならないとダメなのか?」 「先も言ったが、我が与えた魔力が魔法を行使する際の触媒になる。そして、触媒となる魔力がその役目を果たすには対象者──この場合は郁美だ──と同調すること。その同調による影響により、そなたは姿が変化したのだ。よって、郁美の問いに対する回答は肯定である。序でに説明しておくと、そなたが魔法を使いたいと思えば、瞬きよりも早くたちまち変身する事ができるぞ」  なんたることだ。  夢の魔法を使うには女にならなければならないとは!
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