序章[誰かの夢とトリス]

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帝国と王国に隣接した小国、<シエルテ> 武力は二国に劣るものの、 魔導科学は他二国に追従している。 自然の多いこの国の、その辺境の町。 周辺を森に覆われたその森の中。 一人の青年が採集に勤しんでいた。 右の腰に、細身の剣を帯びている青年。 その名を、トリス。 トリス・エリスロード、という。 (こんなところかな…) 一通りの採集を終えたのか、 青年は町の方へと歩き出す。 そこに、黒い、影の様に黒い獣が躍り出る。 まるで狼の様な、しかし、何かが違う獣。 (こいつは―――) ―――魔獣。 魔力に触れ続け、凶暴化、変質した存在。 狼の変異であるこの黒い魔獣、「ワーグ」は 中でも一般的なものだ。 魔獣を倒すには、 魔獣から魔力を取り除く必要がある。 魔力を取り除く方法。 魔力を引き剥がすか、奪うか。 魔力を引き剥がすには、魔力を弾く銀を、 魔力を奪うには、魔力を取り込む鉄を、 それぞれ主成分として武器を作る。 (単体か…なら楽勝かな) 魔獣と対峙する青年は、静かに剣を抜く…
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