序章[トリス・エリスロード]

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序章[トリス・エリスロード]

町に帰ったトリスは、 自宅の椅子に座って、 目の前の机の上に置いた、 自らの剣を眺めていた。 その細身の剣は、鉄の剣。 魔力を奪い、取り込む剣。 (そろそろ、浄化しないと、かな) ――浄化。 物に蓄積された魔力を抜くこと。 トリスだけではなく、 一般的に使われているのは、鉄製。 その為、基本的に騎士の武器には、 浄化の必要性が出てくる。 浄化の方法は、聖水と言われる特殊な水に、 丸一日、武器を沈めておく事。 勿論、浄化の間、その武器は使えなくなる。 (浄化するのは良いけど、 ほぼ確実に錆びるんだよな…) 浄化して、対魔獣の効力を取り戻しても、 錆びた剣では使い物にならない。 その為、剣を使い捨てにする者も、 少なくはない。 (面倒だけど、勿体無いし…) しかし、トリスのように錆を落として、 その武器を使い続ける者もまた多い。 その場合、基本的には鍛治屋に頼む事になる。 (そのくらいなら、僕にも出来るし…) トリス・エリスロードは、鍛治屋だった。
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