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序章[北の洞窟]
ある日、トリスは騎士協会に来ていた。
――騎士協会。所謂ギルド。
依頼をしたり、受けたりする所。
建物内は広くはないが、
所狭しと人が集まっていた。
勿論、集まるのは騎士だけではない。
依頼をしに来た一般人も多い。
トリスがここに来たのは、
勿論、仕事を受ける為である。
手頃な依頼書を探し、手に取る。
――しかし、そこで妙な依頼書が目に入った。
依頼自体はごく普通の魔獣の討伐。
何が自分の目を引いたのか疑問になるくらいだ。
――その違和感はすぐに分かった。
その魔獣の棲息地だ。
――シエルテから北の洞窟。
そこには、多くの魔晶石があるという。
実際、トリスも洞窟周辺の依頼を受けた時に、
何度か近くまで足を運んだ事がある。
質はそこまで良くはないが、
確かに多くの魔晶石があるようだった。
洞窟の奥には、質の良いものもあるだろう。
生活の必需品である魔晶石は、
質が良いほど高値で取引される。
しかし騎士は、緊急時の事を考え、
拠点とする地のギルドが定める自由活動範囲を
依頼以外で越えてはならない
という決まりがある。
そして北の洞窟は、自由活動範囲外。
依頼を受けた時のみ入れるという事になる。
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