第1章

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5年ぶりの高校の同窓会、―――。 「千尋ちゃんっ」 そそくさと受付を済ませ会場に入ろうとした時にかけられた、懐かしい声。 「結子っ」 「きゃーっ、本物の千尋ちゃんだあっ。会いたかったんだからあ」 パタパタと駆け寄って抱き付いてくるところなんて、あの頃とちっとも変らない。 「元気だった??」 「うんっ、千尋ちゃんは??」 「元気だったよ。結子は相変わらず可愛いのね」 「やだあ、もうすぐ24だよ。可愛いとか言わないでよー」 「だって相変わらず小動物みたいなんだもん」 「んもうっ」 大きな扉の向こうには、懐かしい顔がちらほら見え隠れしている。 「みんな来てるんじゃない?? 一緒に入ろうよ」 私は結子の手を取ると、高校生の頃のように腕を組む。 その位置が、触感が、一気にあの頃の自分へと懐古する。 「ふふっ」 気分上々、会場へと足を踏み入れようとした時だった。 「千尋ちゃん、ちょっと待って」 「んんっ??」 ちょっぴり高くて鈴の音を思い返すようなその声に、私は気持ちが緩んでいたんだと思う。 「どうしたの??」 「あのね、千尋ちゃんに話があるの」 「話?? 私に??」 言いにくそうな顔を浮かべてはいるけれど、そこには早く口にしたいという思いが溢れている。 「え、何、――?? 結婚するとか??」 思わず口をついて出た言葉に、結子は満面の笑みで私を見返した。 「やだあ、何でわかっちゃったのお」 「だって結子、頬が緩みっぱなしなんだもん」 「えへへっ。千尋ちゃんには一番に言いたかったの」 「うわあっ、おめでとうっ。結子、良かったわね」 あんまりにも嬉しそうに笑うんだもん。 こっちまで幸せな気持ちでいっぱいになる。 「それで?? どんな人なの??」 「ふふふっ、千尋ちゃんも知ってる人だよ」 「え、私の知ってる人??」 「そう、今日、ここに来てるよ」 「今日?? え、まさか、同級生??」 「ふふふっ、あったりー」 「嘘、まじで?? 誰よ、誰、――??」 きゃあきゃあと声を上げる私たちに、周りの視線が集まってくる。それを気にしてか、結子は私の腕を引っ張ると壁際に向かって歩き出した。
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