第1章

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「ねえ、誰なの?? 同じクラスの人とか??」 「うん、あのね、――」 壁に立つ、スーツ姿の男性に私は釘付けになった。 嘘……まさか、違うよね?? 「久しぶり、――川口」 随分と昔、私のことを名前で呼んだその声の持ち主は、穏やかな笑みを私に向けた。 「……結子が結婚する人って、須藤君なの??」 「そうなの。今回、ご縁があってね、結婚することになったんだけど。どうしても千尋ちゃんには一番最初に報告したいなって、二人で……」 「ちょっと待ってよ、もしかして気を遣ってくれたの??」 「そういうわけじゃないけど、結婚が決まったことを千尋ちゃんが他の誰かから知ったら……あまりいい気はしないでしょう?? だから自分の口からちゃんと報告したかったの」 「馬鹿ね……。そんな昔のことで気を遣うことなんかないのに。せっかくのおめでたいニュースじゃない」 「だってえ」 グスンと鼻を鳴らしながら、うるうるした瞳でギュッと腕にしがみ付いてくる結子に、ちょっぴり胸が痛かったのは、確かだ。 だけどそれ以上に、――。 幸せそうに笑い合う二人の姿に、私は自分のことのように嬉しいとまで思っていた。 幸せになってほしいなって、心の底からそう思っていた。 会もお開きになって、それぞれのクラスが二次会へと向かう流れの中だった。 結子と須藤君はみんなの前で婚約を報告し、たくさんのお祝いの言葉を貰っていた。 少しテンションが上がって結子は飲み過ぎていたのかもしれない。 「いつから付き合ってたの??」 何気なく口にした質問に、結子がその鈴の音のような声で返事をする。 「高2の夏かな」 「えっ」 驚く私を見て、結子はしまったという表情を浮かべた。 私と須藤君が付き合っていたのは、高2になってすぐのことだ。 それに夏って、―― まだ別れてはいない。 別れた後もずっと好きだったの、知ってるよね?? 一緒に泣いてくれたんじゃ、なかったの?? 影でこそこそ二人は付き合ってたの?? ねえ、結子、―――。 夏ならさあ、どう考えたって重なってるじゃん。 私のこと、騙してたってこと??
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