旅立ち

9/23
前へ
/378ページ
次へ
  「というよりも」お師匠さまはとつとつと語った。「カンナはバーストアップを修得する以外に、上級グランブと張り合うすべはないんだ。仮に修得したとしても、その実力が拮抗するとは断言できない。それは了承してくれ」 「わかっています」オレは大きくうなずいてみせた。「オレの総魔力量じゃ、最上級魔導は修得できませんしね。たとえ徒労に終わるとしても、オレはバーストアップを修得します」  そうかといって、お師匠さまは歩みを進める。オレも荷車を引きながらついていく。でこぼこの道に車輪が食い込むたびに、力まかせに引っ張り上げる。ひどく体力を消耗する仕事だ。小さなバッグひとつを担ぎ、爽快に歩くお師匠さまが怨めしい。荷物持ちも弟子の仕事のひとつである。文句などいえるはずもない。
/378ページ

最初のコメントを投稿しよう!

100人が本棚に入れています
本棚に追加