声優になりたいけど・・・ その1

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 そんなわけで、オレのスピーディーな行動力のおかげで、とんとんでオーディションを受けるとこまで来てしまった。これでオレは晴れて声優業界の仲間入りをしたも同然というわけだな。イシシシ・・。  オーディションの内容はまだ公表されていない新作アニメ「スカッと♪オレンジみかんちゃん」の準主役キャラであり、みかんちゃんの彼氏役【真夏 西瓜(まなつの すいか)。これは、オレに決まるのは確実。  「次、36番さんお願いします。」  「はいっ、いまいきますよー。」  オレは意気揚々と審査関係者の待つ部屋へと突撃した。 「はい。まずはっと、え~、自己紹介してもらおうかな、36番くん。」  審査席に座る「監督」がジッと姿勢を変えずに促す。そして、これを読んでいる皆さん、出だしから全く自己紹介するのを忘れてたので、この場を借りてオレの自己紹介をしておこう。  「オレ…いや、私の名前は【肥葉夢元(こえは むげん)】といいます。ただいま大学2年生で、趣味はアニメ鑑賞やグッズを集めること。アニメが好きで声優になりたいと考えています。」  少しこけたが、うまく伝えられたな。このアニメに対する思いは誰にも負けていない。 西瓜役はオレに決定だな。クククク。  「はい、わかりました。では、肥葉くん渡された台本をみて、自分の思ったままに感じたままに声で表現してみてください。声で難しいなら、体を動かしても構いませんので。ではお願いします。」  ・・・台本?ふふ、天才には簡単なことだな。みてろよ愚民共。  「ぼくはー、きーみのことが大すぅきなんだー!(棒読み)世界中のーすべてが 敵になったん、・・・なったとーしてもーまにょ、・・・守ってみせるよー。・・・・」  審査員が唖然としてみている。全員が使い物にならないと感じた。しかし、肥葉だけは違っていた。自分はパーフェクトに演じてるつもりでいた。  「・・・以上です。どうでしたか?」  肥葉は高らかに完璧にやり遂げた気分でいた。しかし、審査員の監督から  「・・・君ひどい滑舌とイントネーションだね。これじゃ話にならない。声優を目指してがんばっている皆さんに失礼だ。不合格。」  しかし、食い下がる肥葉。  「そんなことないです。情熱とやる気はあるつもりなんです。伸びしろやこれからを考えてですね。」  「やる気や情熱なんてないだろ!遊び半分で来るな!帰れ帰れ。」
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