1. 惑星テータ

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――30分ほど前。転送の様子が映像に映し出されていた。 鳥居型のゲートに円筒型のバームクーヘンのような転送装置が取り付けられている。 7人の調査員たちが手を振りながら、転送装置の作り出すホログラフの板に向かってゆく。 その中に、偉知の両親、衛知と水星の姿があった。 「あっ、いるいる! 偉知のお父さんとお母さん!」 千直は画面に指をさして偉知の肩に手を添えた。 画面の中では全員の姿がホログラフの板に吸い込まれる。 「全員、無事に転送されたようです!」 リポーターがそう言うと、偉知と千直は胸をなでおろした。 2分ほど転送装置の映像が流れ続ける。 異変も変化も何もない。 CMに移り、バラエティ番組が始まった。 出発からおよそ30分後だ。 お茶の間の偉知も千直も、何の気ない雑談をしていた。 「もうこんな時間か。じゃ、俺帰るよ」 と、偉知が車いすを反転させようとしたその時だった。 大慌てのリポーターが画面に映し出されたのである。 次に映ったのは、煙が出ている転送装置だった。 「今、炎が! 大きな炎が転送装置から吹き出しました! 安否はわかりません! 何が起こったのか! 繰り返します!……」
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