24人が本棚に入れています
本棚に追加
「え……何だよ、どうしたんだ……?」
モニタの前で、偉知は茫然としていた。
状況が整理できていない。
現場を含めて誰一人状況が掴めていないが、偉知も当事者のように動揺していた。
「嘘……」
千直も混乱していた。
偉知の肩に手を当てて心配そうな顔でモニターを注視した。
展開は動かない。
我に返った偉知は千直の方を見て、作り笑いを浮かべた。
「だ、大丈夫だ!
俺の父さんと母さんだぜ!」
千直は「うん」とできる限り強く頷き、偉知の空元気に力添えしてやることしかできなかった。
結局、この後のNAxAからの公式声明はあいまいなもだった。
最後に「惑星テータは調査中止」とだけが伝えられた。
内部で何が起こっているのか、それについてはノーコメントだった。
その後はオカルト週刊誌が現場を訪れていた観客が数日後に自殺していることを取り上げて陰謀論を唱えたりする以外、メディアにこの事件が登場することはなかった。
湯治からはあの夜、一言「絶対大丈夫だぜ」とメールが届いていた。
偉知は「俺もそう思う」と返すのが精いっぱいだった。
最初のコメントを投稿しよう!