1. 惑星テータ

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―― 話は戻って1年半前。 黒須偉知の両親はNAxA(ナクサ)という、国際的な宇宙研究機関に所属していた。 遠く200光年先に発見された地球型惑星「テータ」。 両親はその調査員に抜擢された。 調査日当日の朝も平穏な日常に変わりはない。 洋室の壁際に立つ本棚には漫画やゲームソフトが詰まっている。 その上にはトロフィーが飾られ、柔道着姿の少年が首に金メダルをぶらさげる写真が並ぶ。 高校生の偉知の部屋はやや広く、小綺麗に片付いていた。 偉知の母が勝手に介入して、汚すそばから片付けてしまうからだ。 「寝坊するよォ! イチ!」 階下でいつもの母の声。 ベッドの上で伸びをして、目覚まし時計を掴んだ。 「なんだよまだ大丈夫でしょ……」 時刻は出発時間の8時。 目覚まし機能は故障していた。 寝ぼけ眼(まなこ)もバッチリ覚める。 「うわうわうわ! やばいやばいやばい!」 ベッド横に立てかけられた二本の杖に腕を遠し、立ち上がる。 偉知は半身不随で下半身が動かない。 杖を器用に使って部屋を飛び出る。 階段を一段飛ばしに降りる様はサーカスのようだ。
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