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食卓に滑り込むと、定位置には冷めたトーストと、固くなったベーコンを添えた冷え冷えの目玉焼きが置かれている。
「おはよう!」
「学校間に合うの?」
母・水星(みずほ)が、空いた食器を片付けながら言う。
「分かんないけど、ハンデがあった方が燃えるだろ!」
偉知は目玉焼きをトーストに乗せた。
トーストを曲げて口にねじ込む。
「何言ってんだか」水星は呆れた口調だ。
乾燥したトーストが喉を襲い、咳き込む息子の顔を見て水星は微笑んだ。
偉知の向かい側では父・衛知(えいち)が顔を隠すようにして新聞を読んでいる。
ほとんどの家庭で電子版が普及しているこの時代、紙媒体を読む衛知は変わり者だと配達員にすら言われていた。
その新聞から目より上だけを出して口を開いた。
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