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「偉知、今日からお父さんたち出発だけど、知ってたかい」
「当たり前だろ知ってるよ!」
目玉焼きとトーストを同時に口に押し込みながら偉知は答える。
「おっ! 知ってたか。さすが偉知。はっはっは」
間の抜けた父親だが、これでも宇宙飛行士である。
これまで月には2度、宇宙ステーションには6度も行っている。
「また留守番頼むよ。鍵閉めとか……」
「分かってるわかってる! 子供じゃあるまいしもう」
偉知は口を尖らせながら最後にベーコンを口に放り込み、杖を腕に装着すると洗面所へ飛んで行く。
杖を使うようになってから数年そこらだが、器用に使いこなしていた。
杖暮らしが始まってからも自室を二階にしたのは、生活の中で常に杖を脚のように使えるよう、自分に課した訓練であった。
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