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「今日だっけ、お父さんとお母さんが出発する日!」
背筋を立てた美しい姿勢で猛ダッシュしながら千直は言った。
背丈やスタイルは普通の高校生だが、運動神経のよい千直の足は実に速い。
「ああそうだ! ヒューストンから飛ぶ!
これから高速飛行船で移動してあっちで出発だ!」
「惑星シータだっけ?」
「惑星テータ! 200光年向こう!」
「それってどれくらい向こう?」
「光の速さで200年、約1900兆キロメートル向こうだな。
俺んちと学校の間を約800兆回往復したくらいだ」
「へええ。どれくらいかもうぜんっぜんわかんない」
「俺もわかんない」
信号に捕まり、足踏みをしながら千直は顎に手をあてて空を見上げた。
「ちまちま宇宙船で移動してたらラチがあかないから、瞬間移動で行くんだぜ。
すげーよな!」
偉知は鼻息を荒くして言う。
その表情は夢を見る少年そのものだった。
「出発って何時?」
信号が青に変わり、二人はスタートを切った。
「日本時間で今夜23時!」
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