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――
学校の教室では英語の試験が返却されていた。
偉知の隣で、男子生徒が坊主頭を両手で抱えている。
「ああああああ頼むううううううう!」
「言っても湯治、ホントは自信あるんだろ?
大丈夫、大丈夫。余裕、余裕」
偉知が声を掛けた彼は山内湯治(やまうち とうじ)。
「お前に二日かけて教えて貰った所はバッチリだ! たぶん!
後は……どうだかな……」
湯治の顔は藍より青く青ざめている。
「いっつも赤点なんだし、もう慣れただろ?」
偉知が言うと、湯治は口をへの字に曲げた。
「今回は違うんだ。普段やらかしすぎて親がカンカンでよ。
親に『次は80点取る』ってタンカ切ったんだ。
もし駄目なら小遣い一年カットだ」
「やばいな。湯治のテストでそんな数字見たことない」
「やばいどころじゃない。熊と全裸で戦って倒さないと死刑ってくらいやばい」
「例えがよくわかんないけど要は死刑じゃん」
そこで中年の女教師から「山内くーん」という声が掛った。
「あああ処刑の時間だああああ」
湯治はフラフラと立ち上がる。
まるでゾンビだ。
「あの世で会おう」
偉知は適当に言った。
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