1. 惑星テータ

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湯治が教師から答案を両手で受け取る。 賞状授与とも、褒章授与とも見える光景だ。 中は見ない。 そしてゆっくりと答案の点数の部分を覗いた。 「がんばったわね」 先生は湯治を微笑してほめた。 点数は……。 「9……6点……!」 「何ィ! マジか!」 偉知は立ち上がりそうになった。 腰が勢いで車椅子から少し浮く。 「よっしゃあああああああ! 偉知に勝ったああああああ!」 「やるじゃねーか!」 湯治は席に戻りながら、偉知と豪快なハイタッチを交わした。 バチィン! という凄まじい音だった。 教室の窓ガラスが振動するほどだ。 「あんたらいっつもハイタッチしてない? それうるさいんだけど」 少し前に座る千直が呆れたように言った。 「覚えとけ! 喜びを共有する時はハイタッチをするんだぜ!」 偉知は親指を立てて暑苦しい言い方で言った。 「そーだぞ。英語で偉知に勝った。これは偉大なことだ。 いつも赤点のこの俺が」 湯治は腕を組みながら声を低くして言う。 「いや俺は100点だ。 95はたまたま好調だった千直」 「何ッ! 残念!」 「おいこらばらすな!」 千直は鬼の表情で火を吐くように吠えた。
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