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《子供に会いたかった。そして私が本当の母親だと、どうしても伝えたかった。》
と、云われ、気がつくと僕は彼女に、ぎゅうっと力一杯抱き締められていた。
彼女が、僕の名前を呼ぶ。
《……真…‥。》
瞳の奥が熱くなって、温かい涙が溢れてきて、こぼれた…。彼女が自分の本当の母親かどうか?ちゃんとした証拠はまだ無いのに、本能的なモノは「母様だ。」と云っていて、無意識のうちに口が動き、彼女の事をこう呼んでいた。
「…‥‥母さん…‥。」
そして、ぎゅうっと力一杯抱き締め返そうとしたら何も掴めなくて、くわっと顔をあげ、眼を大きく見開いた時にはもぅ…目の前にあったのは荒れ放題荒れてコケむした汚い墓石で、周りを取り囲んでいたものも墓石だけ…‥。
~…狐に化かされたような?そうじゃないような?次の日になっても、その次の日になってもスッキリしなかった僕は近所の寺に行き、そこの住職に自分には今いる母親の他に別の母親が居ると最近になって父親から聞いたのだが、その話をした時の父親は激酔いしていたし、からかわれたのだろうと思ったが、やはり気になって。と、それとなく訪ねたところ、笑われるのでは無く、心配そうにされるのでも無く、あの父親がよく話したものだ‥‥。と前置きされて聞かされた内容は次の通りで、
【確かにそうだ。確かに、生みの母親は別に居るが、ある日を境に行方不明になってしまった。が、多分…堪り兼ねて単身出て行ったに決まっている。あの男は‥‥相当な焼きもち焼きだったから、美しい嫁さんに忘れられない男が居る事がずっと許せなかった。…‥嫁さんに何を云おうが何をしようが昔の男から貰った髪飾りを捨てなかった事が、今の義母を連れてきた引き金だろう。だが、そうしてまでも髪飾りを絶対捨てず、逆にソヤとあの男に堪り兼ねたせいだろう…幼いお前を連れて何処かに行こうとしたらしい。それをあの男が探しに行ったが結局、真。お前だけを連れて帰ったと聞いている】
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