ダンプとカラス

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 その夜は夢を観た。真っ暗な中に転がされて、目を覚ます。助けを呼ぶが誰も来てくれない。そのうち足元がざらざらしだして、体が下のほうから埋まっていく。砂だった。  あっという間に砂は首まで押し寄せ、口元をふさごうと嵩を増やす。埋まってしまった口元を強く引き結んで、耐えたが鼻も埋まった。  ああ、もうだめなんだと思ったのは一瞬で、パニックになった。  嫌だ! 死にたくない! 足掻いて体を浮かせようとした。 「助けてっ!」  自分の声で目が覚めた。目の前には心配そうな顔をした真島。 「クロ……大丈夫か?」  過呼吸になりそうなくらい大げさに息を吐いていると、水を持ってきてくれた。 「あ……りがとう、ございます」 「すげーうなされてたから、何ごとかと思ってさ」 「お騒がせしてすみませんでした。もう、大丈夫です。今何時ですか?」 「もうすぐ五時だよ。俺はそろそろ行かねーと」  途端に目が覚めた。うちの中のことをすると言ったのに、朝食も作れないのでは存在する価値もない。 「あのっ! 後何分で出ますか?」 「んー、四十分位」 「じゃあ、真島さんは準備していてください。僕は朝ご飯を作りますから」  「いーよ、そんなに材料ねーし、いつもコンビニで買って適当に食ってっから」  そんなわけにいきません、と僕は冷蔵庫の中を睨みながら答えた。冷凍うどんとしょうががある。  真島がシャワーを浴びに行った。汗っかきだからと本人は言っていたが、昨晩も風呂に入っていたのだから、容姿に似合わずきれい好きなのかもしれない。  急いで湯を沸かし、うどんをゆでる。そこへ砂糖と醤油とだしのもとを足して片栗粉でとろみをつけた。最後に生姜をすって乗せる。
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