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「なんだ、いるじゃねーか。なんでお前電話してこないの?」
「?」
「欲しいもんあったら、電話してこいって言っただろ」
「……そうでした」
「もういいや、めんどくせえ。今日は早く上がれそうだから帰ったら一緒に買い物行くぞ。サイズ合わねーから悪いけど、俺の押入れから着られそうなましな服、適当に着ておけよ」
「はい……」
それからまもなくして、本当に日が高いうちに真島が帰ってきた。
「お帰りなさい。お疲れ様です」
「おう。準備は出来てるみてーだな。じゃ、早速行こうか」
真島の車に乗り込むと、間もなく発進した。東京からほど近い政令指定都市のわりには、この辺りはのどかな風景が広がっている。走っているうちにきれいな夕焼けになった。
「なんか……なにからなにまで、すみません」
僕が小さな声で詫びると、真島はちらっとこちらを見て、すぐ前を向いた。
「まあ別に……俺も暇だったし、ただの気まぐれだから気にすんな。それにうちの中も綺麗にしてくれたんだろ、ありがとな」
三十分程走ると、ショッピングモールに着いた。
「とりあえず、そのみっともねえカッコからなんとかするか。どこの店が好みだ?」
そんな風に言われても、三年間ほとんど服を着ていなかったからもはやどれを着たって変わらない気がする。それでも有名なファストファッションの店が目に入ったのでそこを指差した。
「なんだ、別に安い店じゃなくったっていいんだぜ」
「シンプルな服が好きなので、ここがいいです」
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