ダンプとカラス

12/48

263人が本棚に入れています
本棚に追加
/51ページ
 それから上下の服や下着などの小物を選ぶと、真島は同じサイズで似たようなデザインのものを数点ずつ、勝手に取っていった。僕が気を使って手を出せないだろうと思ってくれているのだ。粗野な風貌からは想像できないくらい、繊細な人だ。  一組はその場で着替えさせてもらって、大きな紙袋を下げて店を出た。 「おう、見違えたな……」 「たくさん買って下さって、ありがとうございます」 「たいしたことねーよ。安い店だ……せっかくだし、なんか食って行くか。クロはなんか食べたいものあるか?」 「外のお店が久しぶりで、何がいいのか選べないです……」 「んなこと言ってもなあ……さすがに何かあるだろ」  そういわれても、本当に思いつくものがない。 「あの……真島さんさえよければ僕が何か作りますので、食べたいものはありませんか?」 「本当に食ってかなくていいのか?」 「はい」 「クロは、何でも作れるのか?」 「たいていのものは作れますし、作ったことがないものでもネットで作り方をみれば大丈夫です」 「すげーな。じゃああれ……ペペロンチーノが食いたい。なんだよ……なんでもいいって言ったよな」 「炭水化物オンリーですよ……」 「いーんだ、あのニンニクたっぷりが好きなんだよ。じゃ、これで適当に買い物頼むわ。数日分は買えるだろ?」  真島は財布から無造作に万札を数枚抜き取り、渡してくる。 「はい……でも多すぎですよ」 「まあ、それでやりくりしてくれよ。俺は喫煙所で一服してくるから、よろしくな」
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!

263人が本棚に入れています
本棚に追加