ダンプとカラス

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 真島のマンションでの居候生活が始まった。  朝早いことが多い真島に合わせて朝食を作り、真島を起こす。仕事に行く真島を見送った後は、部屋の掃除をし、夕食の下ごしらえをしたりして過ごした。  夕方になると御主人様の仕事が終わる時間に合わせて例のガラ置き場に向かい、少し離れた場所からそこを見るのが日課になっていた。  特に収穫がないまま日がとっぷりと暮れた頃、真島のダンプトラックがやって来た。  今日は最終の現場がこのガラ置き場なのだ。最終がこの場所の時は、真島は僕をピックアップしてくれて、一緒に帰るのが常だった。 「今日も会えなかったか」 「はい……」 「御主人様のマンションへ行ったりはしないのか?」  ダンプトラックを転がして、真島の会社へ戻る間、めずらしく真島が踏み込んだことを聞いてきた。 「…………はい」 「そっか……決まりとか、いろいろあるんだっけ?」  御主人様のマンションがどこにあるかはさすがに僕だって知っている。決まり、というわけではないが自分からそこに行くことはできない。 「まあ、早く会えるといいな」 「はい」  会ったところでどうなるかわからないが、会わなければ何も進まないのも事実だ。そんな日々を繰り返しながら、時間だけがあっという間に過ぎて行く。
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