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厄日だと思った。
真島大樹(まじまだいき)は、人を殺すところだった。
もちろん大樹にそんな趣味はないし、そこまで恨む程執着している相手もいない。
大樹はダンプトラックの運転手で、今年三十六歳になる。その日はコンクリートガラを積んでいた。
事故のせいで道がひどく渋滞していて、ガラ受け入れの会社に着いた時は就業時間をとっくに過ぎていた。当然ながら事務所に人の気配はない。
だが、その会社には週に何度もコンクリートやアスファルトを納めに行っているから慣れたもんだし、連絡も入れてある。いつも通り、決まった場所に収めるだけだ。
場内はとても広くて、周囲を囲むように種類ごとの置き場がある。
コンクリートやアスファルト、砕石。
これらはここで大きさなどを揃えて再生され、再び運び出されて行く。
トラックをバックさせ、コンクリートの中でも大きな欠片の収集場所に近付く。荷台を傾けようとしたとき、ミラーにこの場所には似つかわしくない白と赤い色が見えた。
「!!」
大輝はぎょっとして目を凝らしたが、やっぱり見える。ゴミ……の類ではなさそうだ。嫌な予感が頭を掠めてゾクッとする。
日が暮れた無人のガラ置き場なんて格好の……それにある一定の時間を過ぎてしまうと出入口付近の道路は以外に車通りが少なくて……。
おそるおそる、トラックを降りた。なんとなく作業着の前を掻きあわせる様にして、コンクートガラの山に近付く。
嫌な予感は的中する。そこに倒れているのは――人間だ。
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