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そっと後ろに指を入れる。キッチンのオイルを少し借りてみたのだが、久しぶりに触れたそこはなんなく指を飲み込んだ。
「んっ……」
はあっと、息を吐いて指をもっと奥に滑らす。気持ち良さと、情けなさで、いつの間にか涙がまなじりを伝った。
______
次に目が覚めたとき、外は明るかった。そして体が重だるい。昨日、途中から記憶がまったくなかった。
日課であるガラ置き場へも行っていないし、夕食も下ごしらえをしたところまでしか覚えていない。慌てて布団から起き上がる。
真島の姿はなく、キッチンへ行くとテーブルの上に小さな土鍋が置いてあった。中身はたまご粥だ。その脇のメモには無骨な字で目が覚めて食べられそうなら食べるようにとのメモがあった。
体の重さを意識してはじめて発熱していたことを自覚する。それほど自分の体調には疎くなっていた。
真島が帰ってきたことも、その時の自分がどんな格好をしていたかも覚えていないくて、とても焦る。
途端に頭痛や眩暈がぶり返してきたようでまた布団に舞い戻った。
「……クロ?」
遠くで呼ばれている声が、だんだん近くに聞こえる。うっすらと目を開けると、目の前には真島の姿。
「おかえりなさい……すみません。こんな状態で」
「いいよ、それよりも体調どうだ? メシ、食えなかったみたいだな。大丈夫か?」
「すみません……さっきより随分いいです」
先程よりはすっきりした気分で目覚めた。頭痛もほとんどないし、体の熱さも引いていた。真島が僕の額に手をあてる。
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