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「だいぶ熱も下がったみてーだな」
大きな節くれだった手に包まれると、とても心地よかった。
「なんか食うか?」
途端に腹の虫が鳴って、真島に笑われる。先程食べられなかったたまご粥を温めてもらい、テーブルについた。
真島は昨日下ごしらえをしていた野菜と、下味をつけた肉で炒め物を作っている。
「すみません。真島さんのご飯、作れなくて……」
「こんなときはいいんだよ、気にすんな。それに途中まで出来てるから焼くだけだしな」
ふたりで向かい合って、それぞれのご飯を食べる。早く体調を戻して、同じものを食べたいなと思ったりする。
「……ありがたいことだったんだな」
「えっ?」
「クロの作ってくれるご飯はすごくおいしい。いつもすぐ平らげちゃってたけど、もっと味わって食べなきゃなって思ったよ」
「そんなことないです……」
真島はいつもいただきます、ごちそうさまをきちんと言ってくれるし、いつもありがとう、などの労いの言葉も忘れない。
家に置いてもらって、食事の支度と掃除くらいしかできない自分の方がありがたくて頭が上がらない。
なんだかくすぐったい気分のまま、食事を終え、風呂に入って早々に眠ることになった。真島も明日は早出だからちょうどいいと、一緒に灯りを消す。
だがすぐに嫌な夢でうなされて目が覚めた。
寝汗を流そうと風呂で念入りに体を洗ったせいで湯冷めしたのか、熱もぶり返してしまったようだ。
喉が渇いてひりつくようだが、動くのも億劫だった。もぞもぞと動いていると、寝室の淡いライトが点く。
「大丈夫か……クロ」
はい、と答えようとするのだが、喉の奥が貼りついたみたいに声が出しづらい。懸命に頷いて答える。
「何か飲むか?」
今度は頷くまでもなく、真島が水を持って来てくれた。ひんやりとした冷たさが今は心地よい。
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