ダンプとカラス

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 真島の腕の力が緩んだので、するっと腕を抜けた。真島がこちらを見ているのがわかるので、布団を出ると急いで身支度を整える。  あのままでいたら、僕の心臓の音が真島にばれてしまいそうだったから。  朝食をつくり、向き合って食事をする間も、真島の顔を見ることができなくて、俯いてばかりいた。 「やっぱ、クロのつくるご飯をうめーな」  焼き鮭と、味噌汁、おひたしに卵焼き、というごくシンプルな食事だが、真島はいつものように気持ちがいいくらいのスピードでそれらを平らげてゆく。  お腹がいっぱいというよりは、なんだか胸がいっぱいで、僕は早々に食事を切り上げて、洗濯をするために脱衣所に向かった。  洗濯物をより分けて、洗濯機に入れ洗剤をセットする。スタートボタンを押すと水が出てきて、やがて回りだした。  その、流れる渦を見ていると、いつのまにか渦がぼやける。  今までの、すべてのことに合点がいった。
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