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「どうした?」
尋常でない僕の様子に、慌てたように真島が声をかけてきた。
「やっと気づきました」
「えっ?」
「御主人様は僕を放置したんじゃなくて、捨てたんだ」
「そんなの、わかんねーだろ、今までだって数日間放って置かれたって言ってたじゃねーか」
今までと今回の違いは歴然としていた。それに目を背けていただけだ。
「今までは置いていかれるときに、意識はありました。それに一番重要なことに気付いたんです」
「重要なこと?」
「首輪がなかった。御主人様の下僕である証を、身に着けていなかった。捨てられたんです。僕は必要なくなったんだ」
「たまたまじゃないのか?」
「そんなことはありえないんです。もう僕は……いや、はじめから僕は必要となんてされてなかったんです」
真島に抱きしめられて、僕は自分がガチガチと震えていたことに気付いた。
もう、遠い記憶みたいだった御主人様のイメージが急に生々しく蘇ってきて恐ろしくなる。
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