ダンプとカラス

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「あいしてるよ」  御主人様いつもそう言った。そうやって言葉で僕を縛った。  だけどそこに愛なんかなかったんだ。  全ては御主人様の思い通りに、都合のいいペットを育てていただけだ。そして用無しになったから捨てた。ただそれだけ。 「……もしそうなら、クロは新しく人生をやり直せばいい」  降ってきた言葉の意味が理解できなくて、目を瞬かせた。 「お前にとっては、大切な御主人様なのかもしれないが、それでもあんな、死んでもおかしくない状況で放置していくなんて、やっぱり俺は腑に落ちねーよ」  そうだ、僕は真島が気付いてくれなかったらあの石に埋もれてつぶれていたかもしれない。 「……今日で、最後にします」 「ん?」 「ガラ置き場に行くの、最後にします。会えなかったらもう、御主人様を探すのを諦めます」  大きな決心に、体が震えた。  いくら御主人様が僕を必要としなくなったとしても、僕が御主人様という枷を外すのは意味が全く違う。  こんな判断、少し前の自分には全く考えられないことだったから。  不意に温かいもので包まれて、我に返る。
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