263人が本棚に入れています
本棚に追加
/51ページ
「あの……真島さんは、女性が好きですよね」
真島と寝てしまった。もちろん自分で望んでいたし、後悔はないがとても気恥ずかしい。
それにぼんやりしていた頭がはっきりしてくると、疑問もクリアになってくる。
「ん? ああ……まあ、きれいなねーちゃん見たら、頬が緩んじゃうくらいには、好きだな」
「…………そうですよね」
わかっていたつもりでも、しっかりと言葉にされてしまうと結構くるものがある。自然と首が項垂れてしまう。
「まさか、俺がお前とついうっかりやっちゃったとか、思ってるのか?」
その通りだ……。こんな風に問い詰めて、真島が困るのはわかっているのに止まらない。
だってそうじゃなかったら真島が僕を抱くなんてありえない。
あんなに蕩けさせられたけど、決まった相手だっているのかもしれないのに。
「クロ?」
「だって、クローゼットに……」
「クローゼット?」
「洋服が……ありました……」
真島は一瞬きょとんとして、それから豪快に笑った。僕がこんなに惨めな気持ちになっているのに、ひどい人だ。
「あっ、ワリいなつい……。自分でも忘れてたくらいだからさ」
「え……?」
「クローゼットの女物の服、見たんだろ? あれは元女房のだ」
「もと?」
「そうだ。ちなみに言うと、円満離婚な。元女房はもう再婚して、楽しくやってるみたいだぜ」
ではなぜ、洋服を置いているのだろう。別れても、奥さんに未練があるのではないだろうか。
最初のコメントを投稿しよう!