ダンプとカラス

31/48

263人が本棚に入れています
本棚に追加
/51ページ
「あの……真島さんは、女性が好きですよね」  真島と寝てしまった。もちろん自分で望んでいたし、後悔はないがとても気恥ずかしい。   それにぼんやりしていた頭がはっきりしてくると、疑問もクリアになってくる。 「ん? ああ……まあ、きれいなねーちゃん見たら、頬が緩んじゃうくらいには、好きだな」 「…………そうですよね」  わかっていたつもりでも、しっかりと言葉にされてしまうと結構くるものがある。自然と首が項垂れてしまう。 「まさか、俺がお前とついうっかりやっちゃったとか、思ってるのか?」  その通りだ……。こんな風に問い詰めて、真島が困るのはわかっているのに止まらない。  だってそうじゃなかったら真島が僕を抱くなんてありえない。  あんなに蕩けさせられたけど、決まった相手だっているのかもしれないのに。 「クロ?」 「だって、クローゼットに……」 「クローゼット?」 「洋服が……ありました……」  真島は一瞬きょとんとして、それから豪快に笑った。僕がこんなに惨めな気持ちになっているのに、ひどい人だ。 「あっ、ワリいなつい……。自分でも忘れてたくらいだからさ」 「え……?」 「クローゼットの女物の服、見たんだろ? あれは元女房のだ」 「もと?」 「そうだ。ちなみに言うと、円満離婚な。元女房はもう再婚して、楽しくやってるみたいだぜ」  ではなぜ、洋服を置いているのだろう。別れても、奥さんに未練があるのではないだろうか。
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!

263人が本棚に入れています
本棚に追加